有機材料-「プラスチック」について

はじめに

私たちの身の回りにはペットボトルやビニール袋、コップなどの様々なプラスチックが使われています。

プラスチックは汎用性が高く、幅広く用いられますが、”プラスチックとはどのようなものなのか?”と尋ねられた際に答えられる人は少ないのではないでしょうか?

そこで本記事では、このプラスチックがどのようなものなのかについて解説していきます。

プラスチック

プラスチックは合成樹脂とも呼ばれ、人為的に合成された高分子化合物から成る物質の1つです。

高分子については以下の記事で解説してますので、そちらをご参照ください。

私たちの生活を支える重要な物質、「高分子」を紹介
はじめに みなさんは高分子というものはご存知でしょうか? 高分子はペットボトルや衣服など幅広く用いられている物質であり、私たちの生活とは切り離せないものになっています。 しかし、高分子は非常に複雑なものであるため、その詳細を把握している方は

プラスチックは石油(原油)から取れるナフサを原料として作られています。

最近では環境への配慮もあり、サトウキビやトウモロコシなどのバイオマスからもプラスチックを作る取り組みがされています。

プラスチックの特徴

プラスチックは他の材料にはない様々な特徴を持っています。

  1. 高い絶縁性
  2. 水に対する高い耐腐食性
  3. 低い耐熱性

それぞれの特徴について、以下に記します。

高い絶縁性

電気が流れるということは、電子の移動が可能であることを指します。

高分子は大部分が炭素と水素で形成されており、共有結合で強固に結ばれています。

そして、高分子は電子を過剰に持ったり、不足しているないため、電子が移動する余地がありません。

そのため、高分子から成るプラスチックは殆ど電気が流れません。

しかし、この高い絶縁性を改良した導電性高分子という物も開発されています。

こちらに関してはまた別記事にて解説させていただきます。

水に対する高い耐腐食性

プラスチックは水に対する耐性が高く、水と触れていても劣化しづらい特徴があります。

例えば、金属では水が付くと表面から金属イオンが溶出し、水分中の酸素と反応して酸化します。

しかし、炭素の共有結合から成るプラスチックは水に触れても炭素原子が遊離することはありません。

例外として、プラスチック構造中に、水に対して弱い結合(エステル結合など)を含有している場合は水への耐性が下がりますので注意が必要です。

低い耐熱性

プラスチックの大半は熱によって軟化する熱可塑性を持っています。

熱に弱いと聞くと、デメリットのように感じられますが、この熱可塑性によってプラスチックは様々な形状への変形を可能としています。

また、プラスチックの耐熱性を改善するため、エンジニアリングプラスチックと呼ばれる特殊なプラスチックも開発されています。

このエンジニアリングプラスチックについては別記事にて解説させていただきます。

プラスチックの種類

プラスチックには幅広い種類が存在しますが、その中でも代表的なものを紹介いたします。

ポリエチレン

ポリエチレンはビニール袋や包装紙、保存容器などに使用されているプラスチック材料です。

ポリエチレンには以下のような利点・欠点があります。

利点
  • 耐薬品性:薬品に対する耐性が高く、洗剤やアルコールなどの薬品の保存に使用されます。
  • 絶縁性:プラスチック材料の中でも特に電気を通す能力が低いため、電線などの被覆材として使用されます。
  • 耐水性:水を弾く能力が高いため、水による劣化が少なく、汎用性に優れます。
  • 安価:大量生産が可能であり、コストが安いです。
欠点
  • 耐熱性:熱に対する耐性が低く、少し熱が加わるだけでも変形してしまいます。
  • 密着性:シールやテープ、塗料などの密着性が極めて悪く、すぐに剥がれてしまいます。

ポリプロピレン

ポリプロピレンはポリエチレンに似たような構造を持ちますが、より強度が高く自動車部品、家電機器などに使用されています。

ポリプロピレンには以下のような特徴があります。

利点
  • ポリエチレンと同様に耐薬品性、耐水性、絶縁性を持ちます。
  • 安価
  • 高強度:ポリエチレンより融点が高く、強度が高い特徴があります。
欠点
  • 耐候性:紫外線によって劣化し、脆くなってしまいます。
  • 耐熱性:ポリエチレンよりは耐熱性が高いですが、100℃以上の高温をかけ続けると反り返ってしまいます。

ポリスチレン

ポリスチレンは優れた透明性からコップやCDケース、食品トレイなどに使用されます。

また、加工方法によって全く違う使い方をされ、発泡剤(炭化水素ガス)を練り込む事で発泡スチロールになります。

ポリスチレンには以下のような特徴があります。

利点
  • 形状再現性:加工性に優れ、狙った形に形成しやすい特徴があります。
  • 透明性:非結晶性高分子であるため、光の透過性が良好です。
  • 安価
欠点
  • 耐熱性:ポリスチレンの柔らかくなる温度(ガラス転移温度)は100℃であり、ポリエチレンよりは高温でも使用できますが、依然として熱に弱いです。
  • 耐油・耐薬品性:油や薬品に溶解してしまうため、油・薬品の保存に向きません。

ポリエチレンテレフタレート(PET)

ポリエチレンテレフタレート(PET)は飲料容器としてペットボトルとして広く使用されています。また、ペットボトルだけではなく、フィルムや衣服の繊維などにも使用されます。

ポリエチレンテレフタレートには以下のような特徴があります。

利点
  • 耐熱性:PETそのものは耐熱温度が80℃程度ですが、繊維強化をすることによって240℃程度の温度まで耐えられるようになります。
  • 耐薬品性
  • 透明性
欠点
  • 低強度:単独では強度が低いため、工業用途で使用するためには繊維強化を行う必要があります。
  • 高温耐水性:水に触れた状態で熱をかけると加水分解します。
  • 対候性:紫外線によって劣化するため、屋外の長期使用に向きません。

ポリ塩化ビニル

ポリ塩化ビニルは上水道・下水道管などの建築資材、金属や衣類のコーティング剤などに使用されています。

ポリ塩化ビニルには以下のような特徴があります。

利点
  • 加工性:軟らかいため、加工がしやすく形状を自由に変えられます。
  • 耐候性
  • 耐酸性
  • 耐酸性
欠点
  • 耐熱性:耐熱温度が60~80℃であるため、少し熱が加わるだけでも軟化してしまいます。
  • 耐候性:紫外線で塩素が外れて劣化し、黄変します。
  • 毒性:ポリ塩化ビニルの原料となる塩化ビニルモノマーは発がん性があります。
タイトルとURLをコピーしました