はじめに
私たちの身の回りでは、物を固定するために養生テープなどの粘着テープが幅広く使用されています。
この粘着テープに使用されているベタベタした物質が粘着剤です。
この粘着剤は「粘弾性」という特殊な性質を有するため、物に密着し、綺麗に剥がすことが可能となっています。
今回はこの「粘弾性」について解説していきます。
粘弾性とは
粘弾性を有する物質を粘弾性体と言います。
私たちの身の回りでは、先ほど話した粘着テープに使用される粘着剤などが該当します。
粘弾性は、端的に言うと液体が持つ粘性と固体がもつ弾性の両方の性質を合わせたものになります。
水や油などの液体は流動性を持ち、物に対して濡れ広がることができます。
また、ゴムなどの弾性体は力を加えることで、伸び縮みすることが可能です。
これらの物性を併せ持つ粘弾性体は物に触れることで濡れ広がることが可能かつ、ゴムのように伸び縮みが可能となっています。
粘着剤は粘弾性により、貼り合わせの時は物に密着し、剥離時には糊残りなく綺麗に剥がすことができます。
この粘弾性を簡易的に測定する方法として行われるものが動的粘弾性測定になります。
以下から、動的粘弾性がどのようなものなのか説明いたします。
動的粘弾性
動的粘弾性は、粘弾性体の時間・応力・温度による力学的な性質の変化を測定したものになります。
この測定では、貯蔵弾性率、損失弾性率、損失正接の3つの測定値が得られ、それぞれが粘弾性体の性質に大きく影響します。
貯蔵弾性率
貯蔵弾性率は粘弾性体の硬さを表す指標であり、省略してG’と表記されます。
貯蔵弾性率の定義としては、「物体に外力とひずみによって生じた外力のうち、物質の内部に保存される成分」です。
貯蔵弾性率が高い=物質の内部に保存される成分が多い
ですので、より大きい力を受けても硬さを保っていられることになります。
粘着剤にとって、貯蔵弾性率は保持力や剥離時の糊残りなどの硬さが求められる要素に影響します。
貯蔵弾性率が低い場合、保持力試験でおもりによるズリが生じやすくなり、粘着テープを剥離する際に糊残りが生じやすくなります。
損失弾性率
損失弾性率は粘着剤の柔らかさを表す指標であり、省略してG”と表記されます。
損失弾性率の定義としては、「物体に外力とひずみによって生じた外力のうち、物体の外部に拡散される成分」です。
損失弾性率が高い=与えた力が外部に拡散しやすい
ことになりますので、力を与えた際に変形しやすくなります。
粘着剤にとって損失弾性率は粘着力のような柔らかさが求められる要素に影響します。
損失弾性率が高い粘着剤は変形しやすくなりますので、粘着力は高くなります。
※粘着剤と被着体の表面自由エネルギー差などの他の要素も影響する。
また、柔らかさが増加すると保持力が低下する傾向があります。
損失正接
損失正接は粘着剤のタックを表す指標であり、tanδと表記されます。
タックは粘着剤の瞬間的な粘着力であり、タックが高い粘着剤はべたつきが強くなります。
tanδは以下の式から求められる数値になります。
tanδ = 損失弾性率(G”)/貯蔵弾性率(G’)
そのため、tanδが大きい物質は、与えた力やひずみによるエネルギーが拡散しやすいことを示しています。
また、粘着剤のタックの大きさはボールタックやループタックなどで測定できますが、tanδが大きい=各測定値が高いとはなりません。
まとめ
本ページでは、粘着剤の性能を確認する際に広く使用される粘弾性について解説いたしました。
粘弾性測定では、粘着剤のさまざまな性質の情報が得られますので、ぜひ活用していきましょう。