有機材料 -「ゴム」について

はじめに

私たちの身の回りにあるタイヤや履物などの多くのものにはゴムが使用されています。

今回はこのゴムがどのようなものなのか解説していきます。

ゴムとは

ゴムは、ゴムの木という樹木の幹を傷つけて出てきたラテックス(ゴムの分散液)を処理することで得られます。

このように、樹木から得られたゴムは天然ゴムと言い、一方で人工的に合成して作り出したゴムを合成ゴムと言います。

ゴムはプラスチックと同じく、「高分子」というというもので構成されています。

高分子については以下の記事を参考にしてください。

では、この天然ゴムと合成ゴムについてそれぞれ説明していきます。

天然ゴム

先ほど説明した通り、天然ゴムはゴムの木から取れるものになります。

この天然ゴムは「イソプレン」という分子(モノマー)が複数連なった構造を持っています。

イソプレンは上記のように二重結合を2箇所有しており、この部位から反応が広がることで網目状の高分子を形成しています。

イソプレンから成る天然ゴムの特徴は以下の通りです。

・弾性が強い(ゴムの弾力が大きい)

・機械強度、伸縮性が高い(伸びやすく、千切れにくい)

・耐熱性が低い(最大使用可能温度は90℃程度)

・耐油性が低い(油が付着することで劣化する)

・耐候性が低い(日光や雨で劣化して耐久性が下がる)

・耐オゾン性が低い(オゾンによって劣化して耐久性が下がる)

天然ゴムは強度が高く、伸縮しやすい性質を持つため、タイヤやホース、輪ゴムなどに利用されています。

天然ゴムの製造方法

次に天然ゴムの製造方法について解説いたします。

①ラテックスの回収

まずは天然ゴムの元になるラテックスを得るため、ゴムの木の幹に傷を入れます。

傷を入れることで出てくる白色の液体がラテックスになります。

ラテックスが取れる量は季節などの条件によって変動しますが、おおよそ1時間で取り終わります。

また、ラテックスの収量を上げるために刺激剤というものを利用することがあります。

刺激剤を使用したゴムの木は2〜3時間ほどラテックスを取ることができます。

また、一定時間でラテックスが取れなくなる理由は、樹木中のラテックスが尽きるためではなく、切り口が凝固したラテックスで塞がれるためです。

このラテックスを容器に入れて回収します。

②ラテックスの濾過・精製

回収したばかりのラテックスは樹木片などの不純物が含まれていますので、フィルターを通して不純物の除去を行います。

また、樹木から取れるラテックスはゴム成分以外も多く含まれています。

ラテックス中のゴム成分は30〜40%程度であり、他は水分やタンパク質などになります。

③ラテックスの固化

次に、濾過して綺麗になったラテックスに酸を加えて混ぜます。

この時加える酸は、酢酸などの弱酸になります。

酸を加えた後、ラテックスを型に入れて固めます。

④ラテックスの乾燥

酸を加えて固めたラテックスは屋外・屋内で5~7日間自然乾燥させます。

これにより、ラテックス中の水分が蒸発し、ゴム成分が濃縮されます。

⑤ゴム成分の加硫

ラテックスを乾燥させただけでは、ゴムは弾性を発揮することはできません。

加硫天然ゴム中の未知構造が明らかに-理化学研究所

ゴムは乾燥直後では上図のように高分子鎖が単独で存在しています。この高分子鎖に対して硫黄を加えることで、高分子鎖同士が架橋します。この反応を「加硫」と言います。

これによってゴムは弾性を発揮できるようになり、加工されてタイヤやホースなどに利用されます。

ラテックスの組成

ゴムの木から取れるラテックスはゴム成分が細かい粒子として分散した状態をとっています。

しかし、ゴム成分は単独で粒子状をとっているわけではなく、他の成分によって分散状態を維持しています。

この理由の解説のため、ラテックス中に含まれる素性について説明いたします。

ラテックス中に含まれる成分は以下の通りです。

①ゴム成分:全体の3〜40%

②タンパク質成分:全体の約1%

③リピッド(フォスフォリピッド):全体の約1%

④炭水化物:全体の約1〜2%

⑤無機成分:全体の約0.5%

⑥漿液(しょうえき) *さらさらした透明な分泌液

タンパク質成分、リピッド成分は構造中に親水性部位を有しており、この成分がゴム成分に吸着することで、ゴム成分は漿液に分散することが可能となります。

ゴム成分が酸で固まる理由

ラテックス中のゴム成分はリピッドで包まれ、その外側をタンパク質で覆われています。

このゴム成分は中性であり、pHは7です。しかし、ゴムを被覆しているタンパク質はアニオンになる官能基とカチオンになる官能基の両方をもつため、等電点を有しています。

*電離後の化合物全体の電荷平均が0となるpH

そして、ラテックス中のタンパク質の等電点はpH4.7付近になります。そのため、pHが4.7より高い環境ではタンパク質は負に帯電し、pH4.7より低い環境では正に帯電します。

ゴム成分のpHは7でpH4.7よりも高いため、タンパク質は負に帯電しています。これにより、タンパク質に被覆されたゴム成分は漿液中で分散状態を維持します。

しかし、酸を加えてpHが4.7付近まで下げると、タンパク質の電荷が失われ、不安定となることでラテックスは分散状態を維持することが出来なくなり、ゴム成分が固まり始めます。

また、酸を大量に加えてpHを3以下まで下げると、タンパク質は正に帯電するようになり、分散状態を維持するようになります。

タイトルとURLをコピーしました