はじめに
私たちの身の回りは多くの印刷物で溢れています。
食品の包装や広告ポスター、ダンボールなどの様々なものに印刷技術が使用されています。
これらの印刷物は、印刷する対象によって、グラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷などに分けられます。
この印刷方式の分類については以下の記事で説明してますので、ご確認ください。
今回は複数存在する印刷方式の中でも、食品包装やパッケージなどの鮮やかさが求められるグラビア印刷に使用するインキについて解説いたします。
グラビア印刷とは
グラビア印刷は金属凹版を使用し、その凹部にインキを充填し、被印刷物にインキを移す印刷方式のことを言います。
この印刷方式の特徴を以下に記します。
①高速印刷に適する
②凹版を長期間、何度も使用することが可能
③印刷の再現性が高く、印刷物が高品質である
④プラスチックやアルミなどの幅広い物に印刷可能
また、グラビアインキは更に以下の2種類に分けられます。
・出版グラビアインキ:カタログや雑誌などの出版物に使用
・包装グラビアインキ:食品包装、パッケージなどに使用
ではこれらのインキについて説明していきます。
グラビアインキの組成
グラビアインキなどのインキはそもそも単一の物ではなく、複数の物を組み合わせた混合物となります。
基本的に皮膜を形成するための樹脂、顔料、添加剤と皮膜を形成する助剤となる溶剤の4つから成ります。
この組み合わせはインキの種類によって異なるのですが、出版グラビアインキの場合は以下のようになります。
1, 樹脂:全体の20~35%
2, 溶剤:全体の40~65%
3, 顔料:全体の15~30%
4, 添加剤:全体の1~2%
包装グラビアインキの場合では、以下のようになります。
1, 樹脂:全体の10~25%
2, 溶剤:30~75%
3, 顔料:5~55%
4, 添加剤:1~5%
ではそれぞれの役割について解説していきます。
樹脂
樹脂はインキの被印刷物への密着性を高めてくれる物質です。
インキにとって樹脂は非常に重要であり、性能が不足すると、インキ塗膜がベタ付いたり、剥がれてしまいます。
そのため、樹脂には以下の性能が求められます。
①溶剤に綺麗に溶けること
②印刷後に表面がベタつかないこと
③被印刷物との密着性が良好であること
④樹脂がブロッキングしないこと
ブロッキングとは、樹脂同士が固まってしまうことを言います。
例を挙げますと、消しゴム同士を合わせたまま、長期間置いておくとくっついてしまいます。このような現象がブロッキングです。
インキに使われる樹脂ですが、用途に応じて様々な種類が使い分けられています。
代表的に使用されている樹脂を以下に記します。
①ロジン系樹脂
②ニトロセルロース
③塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂
④塩素化PP樹脂
⑤ウレタン樹脂
これらの樹脂の中でも、紙用として特に使用されているものがロジン系樹脂になります。
ロジン系樹脂
ロジンという言葉にあまり馴染みがない方も多いと思いますので、説明させていただきます。
ロジンは松の木から取れる樹脂のことを指します。
このロジンは様々な構造をもつ樹脂酸から成る混合物ですが、主にアビエチン酸という、環構造を3つ、カルボン酸を1つ持ったような構造式をしています。
ロジンは上記のような構造から、紙やプラスチックなどの被印刷物との密着性が良好であり、様々な変性をかけることが可能になってます。
溶剤
インキは塗工性を高めるために、有機溶剤に溶解させて使用します。
有機溶剤には無数の種類がありますが、基本的にインキは乾燥性が求められるため、乾きやすい低沸点の溶剤が使用されます。
例えば、トルエンや酢酸エチル、酢酸プロピル、イソプロパノール、メチルエチルケトンなどが挙げられます。
昨今では環境対応が強く望まれているため、毒性の高い有機溶剤に変わり、低毒性のエタノールや水の使用も進められています。
顔料
顔料はインキの色を出すために使用される物質です。
色を出すための最も重要な物質になりますので、顔料にはインキへの分散性、分散安定性が求められます。
インキへの分散性を出すためには、顔料の粒径や給油量、形状、酸性度が関わっています。
しかし、顔料の製造方法に関してはメーカーで秘匿されておりますので、詳細を知ることは中々難しいでしょう。
添加剤
添加剤はインキに不足する機能を補うために加える物になります。
添加剤を使い分けることで、インキ皮膜の補強、可塑化、酸化防止、帯電防止、消泡、顔料分散などの様々な機能を追加することができます。
まとめ
今回はグラビア印刷・インキについて解説しました。
インキ自体はありふれており、見慣れたものだと思いますが、その組成や用途は中々知られていません。
この記事を機に、インキに関心を持っていただけたら幸いです。