電車が遅延する要因「線路内発煙」について解説

雑学

はじめに

日本の鉄道網は時間通りに運行することで広く知られています。

しかし、日常的に電車に乗っていると、電車の遅延に出くわすことがあるでしょう。

この遅延の要因としては、豪雨や豪雪などの天候によるもの、信号機や車両点検などの技術的なもの、乗客のトラブルや非常事態といった人為的なものが挙げられます。

遅延の発生は仕方がないことではあるのですが、「これは一体何が原因なんだろう?」と思うものも少なからずあると思います。

例えば、「線路内発煙」はその最たる例です。

線路内で発煙していると聞くと、何か重大なトラブルが発生していると感じますが、実際に何が起こっているのかはわからないでしょう。

そこで今回は、電車遅延の要因「線路内発煙」について焦点を当てて、解説をしていきます。

原因

発煙の要因はさまざまですが、最たるものは「タバコの火の不始末」です。

火が点いているタバコ(先端温度300〜400℃)が、線路内の”枕木”に接触することで、焼けて発煙します。

枕木についての詳細は以下の通りです。

枕木(まくらぎ、米:crosstie,加:railway tie,英および豪:railway sleeper)とは、鉄道線路軌道)の軌きょうの構成部材である。レールを垂直に支え、レール締結装置とともにレールの間隔(軌間)を一定に保ち、列車の重量をバラスト(砕石)に伝える部材である。

枕木-Wikipedia

この結論を聞いて、あまり大したことないなと感じた方も多いでしょう。

確かにこれだけで終わってしまっては面白くありませんので、より詳細に煙が発生する要因を解説していこうと思います。

煙が発生する理由

皆さんは煙が発生する理由について考えたことはあるでしょうか?

“物が燃えたら煙が出る”ということは当然ですが、そのメカニズムについて考えることは中々無いと思います。

まずはそれを解説していきます。

枕木が発煙する流れ

発煙までのフローチャート

枕木にタバコが触れ、煙が発生するまでの流れを以下に示します。

これだけ見ても何が起こっているのか、よく分からないですよね。

それでは各項目について説明していきます。

有機物の熱による分解

木材や紙、布などの有機物は主に炭素から構成されています。

そして、これらの物質を200℃で加熱すると、熱分解反応が進みます。

熱分解とは、簡単に説明すると、木材などを構成している炭素同士の結合が切れて分離することを言います。

熱分解についての詳細は以下の記事を参考にしてください。

熱分解とは酸素がない状態で物を加熱することにより、その物が他の物へ変化する事です。熱によって分子のエネルギーが大きくなるため、より安定な分子になろうとして原子同士の結合を切ろうします。そして原子が飛び出し新しいかたまりを作ります。

熱分解とは-Biogreen

木材は殆どが”セルロース”、”ヘミセルロース”、”リグニン”から成る物質であり、非常に多くの炭素を含んでいます。

木材の主要成分はセルロース、ヘミセルロース、リグニンであり、これら3成分が木材の90%以上を占めている。

木と長く付き合う-JIA東海支部

※ヘミセルロース、リグニンの構造式は煩雑であるため割愛

このセルロースですが、200℃付近から分解を始め300℃から分解速度が急速に上がる性質を持ちます。

前述した通り、タバコの先端温度は300〜400℃ありますので、木材は水分が抜けた後に急速に分解して炭素を放出します。

この炭素の分離が煙の発生の第一歩です。

炭素の燃焼

木材から分離した炭素は、そのまま(原子)の状態で漂うのではなく、別の形に変化していきます。

先ほど示したセルロースのような分子は、原子同士が電子を共有することで安定な状態となっています。

これに熱をかけ、無理矢理分離することで発生した炭素原子は、電子を共有していないため、非常に不安定な状態となっています。

通常、エネルギー的に不安定な原子・分子は安定な状態に戻ろうとするため、周囲にある酸素などと反応します。

このとき、酸素が十分に存在し、炭素と酸素が反応することが出来た場合を”完全燃焼”と言い、水や二酸化炭素を形成します。

このようにして発生した水が水蒸気となり、漂ったものが白い煙になります。

一方で、分離した炭素が周囲の酸素よりも多く存在する場合、分離した炭素は十分に酸素と反応することができず、一酸化炭素や煤などを生み出します。これを”不完全燃焼”と言います。

私たちが目にする黒煙は、分離した炭素が酸素と反応できず、炭素の微粒子が漂っているものとなります。

まとめ

今回は電車が遅延する要因である「線路内発煙」について説明いたしました。普段、何気なく見ているものでも、仕組みを考えていくと、見え方が変わってきますね。今後も、このような情報を書いていきますので、引き続き記事を読んでいただけたら幸いです。

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