はじめに
粘着力は、粘着剤の基本的な三物性のうちの一つであり、粘着テープがもつ重要な特性になります。
粘着力の測定方法としては、180°引き剥がし法、90°引き剥がし法、重ね合わせ法など様々な手法があります。
しかし、実際に使用される測定方法は主に180°引き剥がし法と90°引き剥がし法であり、JISでも規格された測定方法になります。
そこで本記事では、180°引き剥がし法、90°引き剥がし法をどのように行っていくのか解説していきます。
引き剥がし方法
言葉で180°引き剥がし法、90°引き剥がし法とは言っても、イメージがしづらいと思いますので、参考図を以下に記します。
JISK6854 接着剤のはく離接着強さ試験方法-日本テストパネル株式会社
180°引き剥がし法は、粘着テープを180°折り曲げたような状態でテープを引っ張り、その時の力を計測します。
90°引き剥がし法では、粘着テープの貼り付け面に対して90°になるようにテープを引っ張り、その時の力を測定します。
測定の被着体
粘着力測定において、テープを貼り付ける被着体は非常に重要なものになります。
世の中には無数の金属やオレフィンがありますので、無秩序に被着体を選定しては、粘着力にばらつきが出てしまいます。
そのため、使用する被着体はJISによって規格されています。
ここではJIS Z0237で規定された被着体を紹介いたします。
被着体の種類
粘着力測定に使用する被着体の種類は、ステンレス鋼板(SUS304, 83×45 mm)になります。
なぜステンレス性のものを使用するのかというと、被着体の品質管理がしやすいからになります。
被着体は使用していくと、当然表面が劣化していきます。
これを元に戻そうとする場合、トルエンなどの溶剤による洗浄や表面の研磨をしなければなりません。
しかし、オレフィン(PP、PE)などの柔らかい素材は、溶剤や研磨で表面が荒れてしまいます。
そのため、誰でも特定の処理方法で表面状態を同じにできるSUSが使用されます。
しかし、実使用を考えた場合、粘着テープはオレフィン部材にもよく貼り合わせますので、JISに規格されていなくても、対オレフィン粘着力はよく測定されます。
被着体の厚さ
JISでは使用する被着体の厚さも規定されています。
結論から言いますと、求められる厚さは2 mm以上になります。
これは、粘着力を測定する際の被着体の反りの影響や、粘着テープを剥離する際の振動などの影響を小さくするためです。
被着体の表面状態
被着体の表面状態は、粘着テープの密着性に関わる部分ですので、測定の際には統一する必要があります。
表面の研磨の方法は、鏡面仕上げ〜360番研磨、表面粗さはRa0.05〜0.40、Rmax3未満となります。
中々大変な作業ですが、SUSの表面はやわらかく、細かい傷が入りやすいため、定期的に研磨するようにしましょう。
テープの圧着条件
テープの圧着条件は粘着力にとって重要な要素であり、この条件を揃えなければ粘着力のばらつきは大きくなってしまいます。
テープの圧着にはゴム製ローラー(ゴム厚さ6 mm, 80±5 ShoreA)を使用します。
剥離試験用圧着ローラー-株式会社イマダ
ShoreAは中々聞くことがない単位だと思いますが、これはアメリカ合衆国の企業Shore社のスプリング式硬度計もしくはその相当品で計測されるゴム硬度を指します。
このゴムローラーを使用し、300 mm/minの速度で2往復することで粘着テープを密着させます。
粘着テープの密着力は貼り付け後の放置時間に影響しますので、ローラーで貼り付けた後は5分以上静置します。
しかし、5分では密着が不十分な場合が多いですので、20分は静置することをお勧めします。
テープの剥離条件
粘着テープの粘着物性は剥離温度、湿度、剥離速度に依存しますので、これらの条件も揃える必要があります。
剥離試験を行う際、測定温度は23℃±2℃、湿度は50±5%に調節しなければなりません。
また、粘着テープは300±30 mm/minの速度で剥離します。