はじめに
前回は電子機器に不可欠なセンサーについての概要、温度センサーの仕組みについて解説していきました。
しかし、センサーの種類には熱を感知する温度センサーだけではなく、他にも様々なものがあります。
そこで本記事では、空気中に存在する水分、湿度を感知する湿度センサーについて解説していきます。
湿度の基礎知識
まずは湿度がどのようなものなのかについて解説いたします。
湿度は空気中の水蒸気量を比率で示したものを指し、一般的に”相対湿度”と”絶対湿度”に分けられます。
相対湿度(%RH):空気中に存在する水蒸気量を飽和水蒸気量で割って算出した値
絶対湿度:1立方メートルあたりに含まれる水蒸気の量
飽和水蒸気量は温度によって変化するため、相対湿度は温度に強く依存する値です。一般的に天気予報などで表示される湿度は相対湿度を表しています。
一方で、絶対湿度は水蒸気の量そのものの重量から算出されるため、温度による影響を受けない特徴があります。
湿度センサー
私たちが日常的に使用している機械や食品などのさまざまな物は、空気中に存在する水分の影響を強く受けます。
例えば、空気中の水分が多いと金属が錆びやすくなったり、食物が腐りやすくなります。
そのため、これらの物を安定して使用するためには、空気中の水分量を測定することが非常に重要となります。
この水分量の測定で使用する物が「湿度センサー」です。
一概に湿度センサーと言っても、この中には更に細かく電気式や熱伝導式など種類が分けられています。
全ての湿度センサーをここで解説することは困難ですので、今回は特に一般的に広く使用されている「電気式(電子式)湿度センサー」に焦点を当て、解説していこうと思います。
電気式(電子式)湿度センサー
電気式(電子式)湿度センサーは抵抗変化型と静電容量変化型の2種類に分けられます。
抵抗変化型:感湿材料の吸湿・脱湿によって抵抗値が変化
静電容量変化型:湿度によって変化する静電容量が変化
これらのセンサーをそれぞれ説明していきます。
抵抗変化型湿度センサー
抵抗変化型湿度センサーは電極の表面に塗布された高分子膜の抵抗変化を読み取ることで湿度を測定するセンサーになります。
このセンサーの原理は以下の通りです。
高分子膜に水分が吸着 → 膜内のイオンの移動しやすさが向上 → 膜の抵抗が減少
また、利点は以下のようになります。
構造が簡単で大量生産が容易かつ安価
このセンサーは電極と高分子膜から成りますので、構造が単純で大量生産が行いやすい特徴があります。また、特殊な装置等を有さず、大量生産が容易な高分子を使用するため、安価です。
高い湿度環境で使用可能であり、結露に強い
抵抗変化型湿度センサーに使用する高分子膜は湿度による分解が起こりづらいため、高湿度環境でも使用可能です。また、精密な機械等を用いないため、高分子膜を拭くことで、結露しても再度使用することができます。
耐久性が高い
抵抗変化型湿度センサーは、センサー部位に使用されている材料は耐水性が高い高分子ですので、水による劣化が少なく、長期間使用することができます。
しかし、使用する以上経年劣化は生じます。更に使用環境が過酷であるほど劣化のスピードは早くなっていきます。
センサーは劣化するほど、測定値の精度が悪くなってしまいますので、安心して使用できる期間は2〜5年程度だと見ておいた方がいいでしょう。
静電容量式湿度センサー
静電容量式湿度センサーはその名の通り、湿度の変化に応じた静電容量の変化を読み取る仕組みを持ったセンサーのことを指します。
静電容量ですが、定義としては「絶縁された導体間において、どの程度の電荷が蓄えられるかを表す量」になります。
例えば、ゴムなどの電気が流れない絶縁体を金属などの導体で挟み、電流を流すとゴムに電荷が蓄積されていきます。
この蓄積できる電荷の最大量が静電容量になります。
そして、絶縁体が水分を吸うと静電容量(電荷を溜められる量)が増加します。
静電容量の増加ですが、これは絶縁体に水分が吸われ、絶縁体の抵抗が減少することに起因します。
このセンサーの利点は以下の通りです。
センサーの応答速度が速い
抵抗変化式センサーは湿度に応答するまでに時間がかかりますが、静電容量式センサーは応答が速い特徴があります。
低湿度で測定が可能
抵抗変化式センサーは使用可能な湿度範囲が狭く、精度もあまり良くない欠点がありますが、静電容量式センサーは測定可能範囲が広く、精度も良好です。
そのため、静電容量式センサーは、高精度が求められる装置等に使用されることが多いです。
まとめ
本記事では数あるセンサーの中でも、湿度センサーについて解説いたしました。
日常の中には数多くのセンサーが使用されていますので、ぜひどのような物があるのか知っておきたいですね。