電子機器に不可欠なセンサーについて解説①ー”温度センサー”

雑学

はじめに

私たちの日常生活では非常に多くの電子機器が不可欠となっています。

パソコンやスマートフォンはその最たる例でしょう。

これらの電子機器の中で、重要な役割を担っているものとして「センサー」が挙げられます。

センサーという言葉は広く使われているため、ほとんどの方がご存知だと思います。

しかし、そのセンサーの仕組みについて把握している人は少ないでしょう。

そこで本記事では、様々な用途で活躍するセンサーに焦点を当て、解説していきたいと思います。

センサーの定義

まずはセンサーについて語る前に、そもそもセンサーとはどういった物なのか、定義について話していきましょう。

センサーは「物理現象を信号に変換する装置」のことを言います。

熱や光、音などの私たちの身の回りにある刺激をセンサーは検知し、信号に変換することで装置を動作させます。

センサーには様々な種類がありますが、今回はその中でも温度センサーについて解説します。

温度センサー

温度センサーとは

温度センサーは周囲の環境や物体の温度を検知するために使用され、以下のように分類されます。

温度センサの基礎-KOA株式会社

このように、温度センサー多くの種類に分けられます。

これらの中で最もわかりやすい単純なものは機械式の熱膨張型温度センサーでしょう。

熱膨張型温度センサー

上図で示したような温度計は、多くの方が一度は目にしたことがあると思います。

この温度計は「アルコール温度計」と呼ばれるものです。

ガラス棒の中に液体が封入されており、この液体に熱が加わることで膨張し、温度を測ることができます。

”アルコール温度計”と呼ばれているため、中に入っている液体はアルコールと思うかもしれませんが、実際には着色された灯油が使用されることが多いです。

これはアルコール(エタノール)の沸点が約78.4℃であり、使用可能な範囲が狭いためです。

温度を測定する場合、100℃以上の温度であることも想定されますので、沸点範囲が170~250℃と高い範囲である灯油が使用されます。

熱電対温度センサー

先ほど紹介した熱膨張型温度センサーは構造・仕組みが単純なものであるため、理解しやすいと思います。

では次に機械式ではなく、電気式の温度センサーについて解説していきます。

電気式の温度センサーでなじみ深いものは「熱電対温度センサー」でしょう。

私たちの生活で広く使用されている体温計は、まさにこの熱電対温度センサーが使用されたものになります。

この温度計に使用される熱電対には2種類の金属線が使用されており、その金属線の温度差を電気信号に変換しています。

熱電対の原理-GEOMATEC

温度差を電気信号に変えると聞いてもよくわからないと思います。

これはゼーベック効果という現象に因るものです。ゼーベック効果の詳細については以下の記事を参考にしてください。

ゼーベック効果(ゼーベックこうか、: Seebeck effect)は物体の温度差が電圧に直接変換される現象で、熱電効果の一種。

ゼーベック効果-Wikipedia

このように熱電対温度センサー(体温計)は金属間の温度差に応じた電気信号を発し、その電気信号の大きさを体温として数値を表示しています。

非接触式温度センサー

先ほどまで紹介した熱膨張型温度センサー、熱電対温度センサーは、熱を計測したい物質に直接センサーを当てて使用するものになります。

しかし、世の中には熱源に触れずに温度を感知するセンサーも使用されています。

日常生活の中でよく見るものとしては、「非接触温度計(赤外温度計)」が挙げられます。

下図で示したような体温計ですね。コロナウイルスが広まった昨今では、飲食店などの公共の場でよく置かれています。

これらの体温計は特定の部位にかざすだけで温度を測ることができます。

これは体温計に内蔵された非接触式温度センサーが、物体から放射される赤外線の強さを検知することで可能となっています。

放射温度計の原理-安立計器株式会社

このタイプの温度センサーは赤外線によって温度を計測するため、物体から放出される赤外線の波長が重要となります。

例えば、人間の体から放出される赤外線は、波長が約9 µmの”遠赤外線”というものです。

人間は約9㎛の遠赤外線を放出している

人間も例外ではありません。人間からも遠赤外線は放射されています。人間の体温の理想値は36.5~37.0℃と言われていますが、この36.5~37.0℃の有機物から放射される遠赤外線の波長が約9㎛なのです。

遠赤外線について-株式会社MOZU

そして、大気中に存在する水分や二酸化炭素などの物質は、特定の波長を吸収する性質を持ちます。

大気の赤外線透過率は以下の通りです。

赤外線について-ジャパンセンサー

上の透過率のグラフを見ますと、9 µmの波長の赤外線は酸素や二酸化炭素に吸収されてしまうことが分かります。

そのため、非接触式温度センサーを使用する場合、測定物とセンサーの距離が非常に重要となり、距離が離れるほど精度が落ちてしまいます。

もし外出先で非接触式の体温計を使うことがある場合、精度よく温度を測るならば、距離に気を付けるようにしましょう。

まとめ

今回は電子機器に使用される「センサー」とその中でも熱を感知する「温度センサー」について解説しました。今後も他の種類のセンサーについて解説いたしますので、楽しみにしてください。

タイトルとURLをコピーしました